第12回 猛威を振るう感染性胃腸炎!ご家庭でできること(その2)
前回に引き続き、感染性胃腸炎のお話をしたいと思います。原因は嘔吐した吐物や下痢便に含まれる、ウイルスによる保育者や保護者の手を介した接触→経口感染でした。
お子さまが嘔吐を始めたら「お子さまに対しては何も飲ませず、食べさせずに小児科へ!」「汚れた衣服は単独で洗濯後、乾燥機へ!」「汚れた家具や床はハイター!」「トイレとお風呂場のドアノブ・水栓もハイター!」でしたね。
嘔吐を止めることを第一に考え、小児科受診をお願いします。次は二次感染の予防に移ります。胃腸炎関連ウイルスは非常に生命力の強いウイルスです。人間の胃袋にある胃酸は食べ物を溶かすほどの強力な酸ですが、それをものともせずに増殖し病気を発症させます。つまりアルコール消毒は無効で、次亜塩素酸を主成分とした、強力な塩素系漂白剤で殺菌する必要があります。換気をよくした空間で、床の上の嘔吐物や下痢便はキッチンペーパーで覆った上から原液を塗布できればそれが一番の対応となります。汚れた衣服はウイルスを殺す第2の方法、過熱をする目的で洗濯後に乾燥をかけましょう。湯船の中に入れて70℃以上のお湯をかける方法もありますが、熱傷が心配ですので、くれぐれも気を付けてください。一連の後かたづけの際にはトイレ掃除用等のゴム手袋を装着しましょう。
胃腸炎にかかった患者様の次の症状は発熱です。胃腸炎関連ウイルスは胃を通り越して小腸に到達すれば、嘔吐の症状も落ち着きをみせ始めますが、小腸より血液中に侵入したウイルスは発熱を引き起こします。発熱の期間は原因ウイルスによって様々ですが、10時間程度が多いです。おおむね発熱が収まるかどうかの時に下痢症状が現れます。ウイルスが大腸に侵入しているものと考えられます。この頃には嘔吐の心配はありませんので今度は積極的に飲水を行う必要があります。下痢で失う水分を口から補給して脱水を防ぎます。人間の大腸では侵入してきたウイルスを排除しようと下痢をして腸内を洗おうとしています。お風呂やトイレの掃除のときに水を流しながら掃除をするのと一緒ですね。水分摂取が一番の治療となりますが、飲水がうまくいかない場合や、腹痛が強い時などは、医療機関で点滴等を受けるようにしてください。下痢は数日間続くことがありますが、ウイルスの種類等によって収まる期間はまちまちです。
以上が冬に大流行の感染性胃腸炎のあらましでした。皆様もいつ自分が罹患するかわからない胃腸炎に知識だけでも備えていただければ幸いです。
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