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第17回 貧血の治療の実際 ~あなたの家計は大丈夫?家計診断こそ貧血治療の極意!~

[2022.02.28]

 

前回、貧血(血液の濃度が薄い状態)は女性の美容の天敵であることを説明しました。ヘモグロビン(Hb)が低下すれば悪い魔女の魔法がかかり老婆の姿になってしまいます。そうならない間に貧血治療を行い白雪姫の様に健康的な美しさを手に入れてみてはいかがでしょうと説明しました。では、どのように貧血治療をすればよいのでしょうか?本日は貧血の評価と治療についてのお話です。

健康診断ではヘモグロビンのみを測定しますが、医療機関ではより詳しく、血清鉄、フェリチンといった項目を測定します。ヘモグロビンの正常値は女性であれば13.0g/dl以上です。息切れ、疲労感、抜毛等の自覚症状はヘモグロビンが10.0g/dlを下回ると出現してきますので、自覚症状のない10-13g/dlの状態を放置する方が多いです。しかし、魔女の魔法は確実に進行しています。ヘモグロビンは血液中の赤血球の中に含まれる酸素を運ぶための鉄分と覚えてください。血清鉄(Fe)は血液の液体の中に溶けている鉄分で、酸素を運ぶ能力はありませんが骨の中心部分にある骨髄まで運ばれてヘモグロビンとなる材料として重要です。最後のフェリチンは我々の筋肉の中にある貯蔵鉄といわれる鉄の不足分を補うために存在します。これらの貧血の3つの指標を家計に例えると、ヘモグロビンはよく使う100円、500円、千円札です。日々の買い物に毎日使用して生活に密着しています。血清鉄は財布の中にあるけど滅多に使うことがなく、残しておきたい一万円札です。そして貯蔵鉄であるフェリチンは預金通帳の残高です。ヘモグロビン10.0g/dl以下の方は日々の生活にも困る程度の金欠状態であり、ヘモグロビン10-13g/dlの方は日々の生活はできていますが、財布に一万円札はなく預金残高0円の自転車操業状態の家計とお考え下さい。この状態で、もし出血を伴うような怪我や事故、病気になれば非常に重篤な状態となることが予想されます。

では、貧血の治療はどうすればよいのでしょうか?そこは家計診断と同じです。収入を増やして支出を抑えることが必要となります。鉄分の含む食事をとり・・・と言いたいところですが、鉄欠乏性貧血に於ける食事療法は無効です!不足を補うほどの鉄分を食事からとるのは至難です。食事に含まれる鉄分は通常1-2ミリグラム、ヘモグロビンの必要量はグラム単位で1000倍の開きがあります。まずは、どうして体が鉄分を失ってしまったかの原因を究明すると同時に、医療機関での適切な処方や静脈注射による鉄分の補充が必要となってきます。皆様、魔女の魔法がかかる前の貧血治療をお願いいたします。

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