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第9回 LDLそんなに悪玉か?優秀な経理は会社(体)を救う(その2)

[2021.11.29]

前回のあらすじ、LDLコレステロールが悪玉コレステロールと紹介され、すっかり定着しましたが実は新しい血管を作る大切な資材です。では何が悪いのかをある工務店を例にとって紹介しております。家を建てる資材(LDL)の過剰発注を行った為、それがもとで現場周辺の交通渋滞(血管の狭窄)を引き起こし、更には資金難(循環不全)となった工務店。今や廃業目前となりました。その時!

親方には二人の息子がいました。兄はスポーツ万能、手先も器用で高校卒業後は家業を手伝い頭角を現し、今や頼もしい職人です。親方も後を安心して任せられる腕と自慢しております。一方で弟は小さいころから病弱でひと月に小児科のお世話になること一度や二度ではありません。成績はよく高校卒業後は大学へ進学して会社勤め、おもしろくない親方とは疎遠で年に一度会う程度、そんな弟が会社を辞め嫁と孫を連れて帰郷しました。弟の名前を須田 仁(スタチン)と申します。仁君は親方に今までの疎遠を詫びて家業を手伝うことを申し出ます。並んで座る孫の顔を見れば亡き妻にそっくりの長女に幼いころの息子たちに似た下の兄弟。親方は平静を装いながらも嬉しくないはずがありません。

翌日より仁君(スタチン)の活躍が始まります。会社勤めで培った知識を使い、建坪面積と家の型をパターン分析(体格診断)することで必要資材(LDL)を試算して、必要量だけを工場(肝臓)に発注を行います。一方で今まで道路や現場に放置されていた不要資材を運送会社(善玉コレステロールHDL)と次々契約して工場(肝臓)へ返品再生を行わせます。必要資材が適正化(LDL値の適正化)されたことに加えて、放置されていた資材が回収されクレームも収まり(動脈硬化の改善)、加えてリサイクルによって得られた資金(必要栄養素)によって、会社(体)はみるみる業績を伸ばして安泰となりました。

現在、高コレステロール血症の治療には一般名スタチンと呼ばれる内服薬が使用されます。スタチンは肝臓でのLDL合成の過剰生産を抑えることで血中のLDL値を下げるだけでなく、既に生産されたLDLが血管の内側にこびり付いているのを掃除して肝臓に戻すHDLコレステロールの値を上昇させるという2重の効果を持った内服薬です。でも、忘れないでくださいLDLは血管を作る大事な資材です。悪玉となった理由は肝臓における過剰生産と血管の内側を流れて現場に到着することなのです。

次回はスタチン以外のコレステロール治療薬や中性脂肪のお話をしてみたいと思います。

(注:文中に出てくる工務店のお話はフィクションです。)

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